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蕎麦屋での出来事 その2.『聖母子像』

公開日: : 父として息子として夫として

隣りでゆっくりと親子どんぶりを食べている
55歳くらいの男性の肩の力は抜けていて、
何物にも焦らされていないその姿は、
幸福そのものの姿とさえいえるものであった。

お母さんを信頼しきっている子どものままだ。

そして、ようやく一粒のご飯粒も残さず、
食べ終わったときの彼の一言の響きは、
私の記憶から離れないに違いない。

彼は、自分が食べ終えたどんぶりと
母親の目を優しく眺めながら、
僅かなささやくような声でゆっくりとゆっくりとこう言ったのだ。

「お・い・し・か・った・あ」

そして、母親は、
「よかったね」と、ニコッと微笑んだ。

私は、天草への帰路、これまで何を急いできたのだろうと思った。
仕事の成果や、あれやこれと何を頑張ったというのだ。
すべてに対して、
やさしい心持ちで生きてくるだけでよかったのだと悔いた。

母との食事をあの親子のように楽しめたことがあっただろうか。
母との食事の最中、自分は、
これをやっちゃいけない、あれもしちゃいけないと
何癖をつけることばかりだったじゃないか。

どうしようもない心になろうとしている自分のなかに
湧きあがり、また生きる勇気を授けてくれたのは、
蕎麦屋で見かけたあの親子の姿だった。

今日のささやかな出会いと偉大な気付きに心から感謝した。

そして、14年前に
五足のくつのレストラン「邪宗門」を建設した際、
最後の仕上げは、コンサルタントやデザイナー、設計士の反対を押し切って、
30mの回廊の先に、聖母子像を安置することを決定した日のことを思い出した。

私は、夕焼け空の下、車を五足のくつへ向かわせた。
「邪宗門」の回廊に立ち、グレゴリオ聖歌を聴きながら、
五足のくつの成功を心から応援してくれていた亡き母のことを反芻した。

「五十の児に七十の母あり この福、人間、得ることまさに難かるべし」

頼山陽が詠んだ詩が、今朝の読売新聞に掲載されていた。

 

18

↑五足のくつのレストラン「邪宗門」の聖母子像

 

 

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石山離宮 五足のくつ オーナー 山﨑 博文
下田温泉一の老舗『旅館 伊賀屋』の六代目として 天草下田温泉に生まれた天草育ちの天草男児。 2002年7月に、九州の西の果て、東シナ海を見渡す山に 全室露天風呂付き離れの温泉旅館『石山離宮 五足のくつ』をオープン。 趣味は散歩と温泉と水泳。旅行家としての一面も持つ。
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