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大相撲天草場所と一人相撲

公開日: : 天草人として, 自身のこと

地元の保育園から中学校までの同級生の宮口とは今でも飲み友達である。
下田温泉で鮮魚店を経営しているが、いつも元気がいい。
その宮口から突然、今朝電話があった。

「もう十両の取り組みが始まったぞ」
「なんば言よっとや」と、私。
「大相撲天草場所のありよるけん、
早お来い。チケットはあるけん」

どうやら天草巡業の大相撲のチケットが一枚、
余ったから出て来い、ということらしい。
チケットが完売し、私は買えなかったので、
ちょうどいい、と思い、晴れた天草路を車を飛ばし、
会場の天草市民体育館まで出掛けてきた。

会場には、満員御礼の札が下げられ、熱気に溢れていた。
呼び出しの声がこだまし、土俵上では熱戦が繰り広げられている。

「そこで観とってよかけん」
宮口が指さした席には黄色い座布団が敷かれ、
土俵からは、前から二番目の席である。
幕ノ内弁当まで置いてある。
なんて今日は運のいい日だろう。
最高だなあ、などと思いながら、
いったい誰を宮口は誘う予定だったのだろう、と訝しんだ。

拍子木の甲高い音が鳴り渡り、これより三役となったころ、
後ろに座るおじいさんがおばあさんに自慢げに話している声が聞こえてきた。

「こん拍子木は、福連木の山の樫の木で作ってあっとばい」
「福連木て、天草の下田温泉の近くのな」
「おう、そうたい。歌舞伎で打つ拍子木も福連木の樫の木で作ってあっと。
江戸時代には、福連木の山は、官山て言われてな、
無断で入った者は、打ち首獄門じゃったって。
そのくらい、こん樫の木は堅くて、
江戸幕府が武器や要塞を作るときに重宝しとったって、
ウチの爺さんが言よらった」

「へえ、あんたなんでん知っとるなあ。
わたしゃ天草生まればってんそがんはなしゃ初めて聞いたばな」

千秋楽が終わり、宮口に、
「おもしろかった!弁当まで食べて大満足ばい。
お礼に奢るけん、一杯、飲んでいこうか。代行で帰ればよかろうもん」
と、私が楽しそうに言うと、
宮口は、私の顔も見ずに、今日は帰る、と言う。
こういうイベントに参加したときは、
我々の間柄では飲まないで別れるなどということはまず無いのだが、
どうも元気がなさそうだ。
帰り道、ひとり車を走らせ、福連木の官山の樫の木を眺めた。
宮口に何があったのだろう、と思いながら。

そうこうするうちに小学校6年生のときの出来事を思い出した。

学校の裏山を清掃していたときのことだ。
私は、土のはいった重い袋を冗談のつもりで宮口に投げた。
すると、それを抱きかかえたまま宮口は、後退り、
頭から3メートルほど落ちてしまい、
急いで駆け降りると、頭から血を流していた。

大変なことになった。この責任からは逃げられない。
先生から叱られるに違いない、という
自分を守ろうとする感情が先に浮かんだ。
すると、そんな私とは裏腹に宮口は、こう言った。

「先生には、俺が勝手に落ちたって言うけん、
おまえはなんも言わんでよかけん。
一人相撲ばして、浴びせ倒しで負けたって先生には言うけん」
血を流しながらそう話す宮口に私は、頷くことしかできなかった。

翌日、宮口は、欠席した。
放課後、宮口の家へ行くと、
ママ(下田温泉では、当時、ママといえば宮口のママ、
パパといえば、宮口のパパだった)が、
「こん子は、バカやけん。
あがんとこでふざけて一人相撲ばして、ケガして、
ほんとバカやけん」
目の前の宮口は、痛々しく包帯を巻いて笑っていた。
その表情は、よかけん、よかけん、と私に語り掛けていた。

 

 

IMG_0270

↑この拍子木が天草、福連木の官山の樫の木で作ったもの。
この瞬間の一枚を撮りたくて10枚以上はシャッターを押した。

IMG_0280

 

↑あの有名な横綱が…

 

IMG_0286

 

↑白鵬vs鶴竜
たまには本気を出してこんな取り組みもしているようだ

 

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↑館内に響く、威勢の良い声が気持ちいい。
天草の人は相撲が大好きだ。声援がすごかった
IMG_0294

↑大正時代には、天草では、相撲があちこちの神社で開催されていた。
特に、下田温泉祭での下津深江神社の奉納相撲には、
天草中から力自慢の若者たちが集ったという。
この石碑は、当時、天草中に名をはせた
下田温泉の相撲取り,隼元治を記念して建てられたもの。
私の毎日の散歩コースにある

 

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↑宮口からもらった「大相撲天草場所」の座布団。
気に入って早速、事務所で使っている

 

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石山離宮 五足のくつ オーナー 山﨑 博文
下田温泉一の老舗『旅館 伊賀屋』の六代目として 天草下田温泉に生まれた天草育ちの天草男児。 2002年7月に、九州の西の果て、東シナ海を見渡す山に 全室露天風呂付き離れの温泉旅館『石山離宮 五足のくつ』をオープン。 趣味は散歩と温泉と水泳。旅行家としての一面も持つ。
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