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吉田山荘 その5.

公開日: : 2017年2月 京都, 旅行家として

29歳のときに今、五足のくつが建つ土地を買った。
その翌年、最初の計画を実現すべくチームをつくった。
3年ほど頑張ったが、実現することなくお蔵入りとなった。
その経験から得た最大の反省点は、
「先生」をつくってはだめだ、ということである。

たとえば、そのチームには、
ある有名なコンサルタントに加わっていただいていたが、
その方の発言にはだれもノーとは言えなかった。

なぜかー
先生だからである。

先生の発言の後には、皆、思考停止していた。
柔軟な発想や、面白い意見も先生が否定すると、それは葬り去られた。
だから、五足のくつを造ったチームでは、
コンサルタントにも設計士にもデザイナーにも
「先生」という呼称を使わなかったし、
五足のくつオープン後も
私をはじめスタッフもいわゆる士業の方々に対してさえも
先生という呼称は使わないということを徹底していた。

だが、7,8年ほど前からだろうか、
五足のくつには、たくさんの「先生」が現れるようになった。

つまり、世に言う「先生」に対して、
素直に「先生」と呼ぶことができるようになったということだ。
この件に関して、以前のようなこだわりがなくなったのである。

「私は、なにを頑固に主張していたのだろう」

同じようなことで、五足のくつ建設に関して尽力し、
オープン後も初代支配人を務めてくれた木籔が、
オープン当時、スタッフに強く要求していたことが、
スタッフ間での呼び名は、「~さん」と苗字で呼ぶということだった。
遊びではなく、仕事なのだから。
というのが木籔の主張だった。
私ももっともなことだと、それを断然奨励していた。
そして、それは徹底されていたが、
これもいまや、おぼえているスタッフさえもいないのではなかろうか。
皆、仲良く「~ちゃん」「~くん」と呼び合っている。

「私は、なにを頑固に主張していたのだろう」
京都滞在最後の日の朝、吉田山荘の離れの客室で瞑想していると、
五足のくつの今昔が浮かび上がって来、
それらを眺めるが、やがてすべては溶けていく。

そういえば、この瞑想を始めたのは、
五足のくつがオープンして3、4年経ったころだった。
それまでの旅館伊賀屋の息子「ヒロ坊」から
五足のくつのオーナーへと変わりつつあったころだ。
自分で問題を勝手に作り出し、それに拘泥し、
無駄に忙しくし、心が休まる暇などなかったころのことだ。
新しく出会う人たちが妙に優秀に思えていた。

自分の「できていなさ」を嘆き、
自分を傷つけ続けていた。
この心と感情の連続性を止める必要に駆られていた時に、
この瞑想に出会った。
そして、瞑想を続けることによって、
「~でなければならぬ」をたくさん詰め込んでいた私は今、
少しだけ自由になったように感じる。
ひとつのことを長年続けることで得られるものは僅かであるが、
僅かなものであるからこそ、文字通り、
「有り難い」のであろう。

吉田山荘の本館の前では、
女将さんやお嬢さん、親切な仲居さんが笑顔でお見送りくださった。
私は、歩いて坂道を下りながら、
「旅っていいなあ。今度はどこへ行こうか」
と、ついひとりごとを言った。
「うん?どこかで聞いたことがあるセリフだな」と思った。

それは、五足のくつがオープンした15年前、
ある雑誌の取材を受けた際に私は、
このように答えたのだ。

「私は、お客様がお帰りになるとき、
この五足のくつの急な坂道を降りて、
青い東シナ海を眺めながら、旅っていいなあ。
今度はどこへ行こうかと、呟いてほしいのです」

 

 

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↑吉田山荘の方々と

 

 

 

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石山離宮 五足のくつ オーナー 山﨑 博文
下田温泉一の老舗『旅館 伊賀屋』の六代目として 天草下田温泉に生まれた天草育ちの天草男児。 2002年7月に、九州の西の果て、東シナ海を見渡す山に 全室露天風呂付き離れの温泉旅館『石山離宮 五足のくつ』をオープン。 趣味は散歩と温泉と水泳。旅行家としての一面も持つ。
石山離宮 五足のくつ オーナー 山﨑 博文

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