*

下田温泉の自然の甦り

先日、神戸の常連のお客様が地元でダクマと呼んでいるテナガエビを獲りに行かれた。
下田温泉では、夏の風物詩となっているダクマ獲りである。

私もご一緒することにした。

2mほどの竿の先に直径15cmほどの網をつけ、暫し川を眺める。
すると、石の下からダクマが姿をあらわし、それを網で素早くすくい上げるのだ。
小学生の子どもでも簡単に獲ることができるのだが、
今年は少し、様子が違う。
とにかくダクマの数が私の知る限り、こんなに豊富なのは稀なことである。
10分ほどで、獲ったダクマの姿でバケツの底が見えなくなった。

また、その日、川を眺めていて、
川に住む生き物が40数年ほど以前の私が幼い頃の状態に戻りつつあることに気付いた。

地元ではトンプロと呼び、その滑稽さからよく子供のあだ名などにも使われる
黒い10cmほどの川底にくっついたように生息している魚を久しぶりに見た。
「えっ!おまえ、いままでどこに隠れていたんだ?」
と思わずしゃべりかけたくなるような懐かしさを感じていると、
その傍らにはやはり10cmほどのハゼが同じようにして石にへばりついていた。
ハゼも長らくこの川にはいなくなっていたなあ、と思っていると、
カワミナという貝が、これもまた、懐かしい姿を見せていた。

優雅に泳ぐ尺鮎を見ながら、私は、幼い頃の夏休みの情景を思い起こしていた。

夏休みの朝は、「今日は何をして遊ぼうか」と胸震わせながら起きたものだ。
覚えたての自転車に乗り、ダクマ獲りや海水浴に熱中していた。
朝から晩まで忙しく旅館伊賀屋で働く両親は、子供の面倒をみる余裕などなかった。
私には、それが自由に感じられ、居心地がよかった。

この居心地のよさは今でも変わらない。

当時、一緒に遊んでいた同級生とは今でも頻繁に酒を飲んで遊んでいる。
「川のきれいになってきたぞ。昔んごつトンプロもハゼもミナも復活して、
ダクマもメチャクチャ増えとる」
と私が言うと、酔っぱらった同級生の魚屋のカンノリが
「住む人間の減れば川も海もきれいになっどもん」
と言いながら笑っていた。

何人かの同級生と下田温泉で車ですれ違うと、
「今日はどこで飲もうか」
とどちらからともなく尋ねる。
「今日は何をして遊ぼうか」
と言っていた幼い夏休みのころと何も変わらない。
平和な日々。

 

1

↑普通の川ハゼとは少し違うが、ハゼ。下津深江川特有かもしれない。
このハゼの色の黒くなったものがトンプロで、加賀料理で供されるゴリに似ている。
多分、食べれば白身でおいしいもかもしれないが下田温泉では誰も食べない。
加えて鮎もだれもとらず、他所から来た人が時々網をかけているのを見かける。
ウナギもたくさんいるが、地元の人は誰もとらない。
なぜなら海の魚が豊富だから川の魚は食べないと昔から言われている。
ただ、ダクマ(手長エビ)だけは、揚げたり、煮つけにしたりして食べる。

 

3

↑カワミナ。小さいころ、これをたくさんとっては
ズボンのポケットに入れて持ち帰っては、ヤドカリだったことが何度もあった。
カワミナは、割ってハエ釣りのエサにもしていたなあ。

2

↑お客様と一緒に獲ったダクマ(手長えび)
5-10分ほどてこんなに獲れた。今年はとにかく多い!

 

 

 

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石山離宮 五足のくつ オーナー 山﨑 博文
下田温泉一の老舗『旅館 伊賀屋』の六代目として 天草下田温泉に生まれた天草育ちの天草男児。 2002年7月に、九州の西の果て、東シナ海を見渡す山に 全室露天風呂付き離れの温泉旅館『石山離宮 五足のくつ』をオープン。 趣味は散歩と温泉と水泳。旅行家としての一面も持つ。
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