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鎮魂歌

公開日: : 最終更新日:2014/12/20 天草人として

海から吹く潮風が、柔らかくなった。
春はもうすぐ。ここ下田の海岸には、今、薮椿が咲き乱れている。
日々海を眺めて暮らしていても、同じ海の姿を見たことがない。
「海の姿は人間の姿と一緒だな」と、つくづく思う。

400年前、この海で育ち、
この海を渡り異国へと旅立った、天草の先達たちがいた。
「天正遣欧使節団」と呼ばれる少年たちだ。
日本人として初めて欧州の地を踏み、
ローマ法王に謁見した4人の少年たちだった。
彼らは「天草コレジョ」と呼ばれる神学校で、
最高の学問を受けたエリート。
8年をかけて欧州を巡り、その後天草に戻った。
しかし、彼らの帰国は遅過ぎた。
帰国した時にはすでにキリスト教は禁教とされ、
彼らはその後、苦難の道を歩んだ。
ある人は神を信じる強い意志により処刑され、ある人は国を追われた。
そしてある人は宗教を捨てたという。

薮椿の花が風に吹かれて、「ぽとり」と落ちた。
真っ赤な花は、まぶしいくらいに鮮やかだ。
昔、椿は、“首が落ちる”という理由で、
武士にはあまり好まれなかったという。
彼らは、この薮椿を見ただろうか。

久しぶりに崖から降りて、浜辺を歩いた。
無骨な岩肌とごつごつした石の歩きにくい浜辺である。
この場所から、沈む夕日を眺める時いつも、
4人の少年のことを思い出す。
ぎらぎらと輝く太陽。そしてその太陽を呑み込む藍の海。
毎日繰り返されるこの情景は、
彼らへの“鎮魂歌”だと、・・私は思う。

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石山離宮 五足のくつ オーナー 山﨑 博文
下田温泉一の老舗『旅館 伊賀屋』の六代目として 天草下田温泉に生まれた天草育ちの天草男児。 2002年7月に、九州の西の果て、東シナ海を見渡す山に 全室露天風呂付き離れの温泉旅館『石山離宮 五足のくつ』をオープン。 趣味は散歩と温泉と水泳。旅行家としての一面も持つ。
石山離宮 五足のくつ オーナー 山﨑 博文

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