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思い出という財産

公開日: : 最終更新日:2014/12/20 旅行家として, 自身のこと

旅行代理店の前でふと、足をとめた。
春休みを前に、店先はパンフレットを手に取る人々でにぎわっている。
今度はどこに行こうかな、と考えた。
長い休みの時は家族旅行がお決まりの行事だからだ。

昨年の夏休みは、パリへ行った。
ルーブルやオルセーなど美術館めぐりを楽しんだ。
ルーブル美術館では、モナリザの前で子供たちの写真を撮った。
世界的な名画を前に笑顔を見せている彼らの姿は、今見てもまぶしいほどだ。
ホテル リッツで食事をしたときは、大人と同じフルコースをたいらげた。
ここは、ダイアナ元皇太子妃が最後に食事をした場所だよ、と話すと、
神妙な顔つきで辺りを見回していた。
街を歩けば、すれ違うパリジェンヌたちを、憧れのまなざしで見ている。
帰国した後も、しばらく服装や歩き方をマネしていた。
初めて海外旅行をしたときの彼女たちはどこか緊張している様子だったが、
今ではすっかり旅慣れていて、のびのびとしている。
いろんなものを吸収しようとする姿にわたしの方が驚かされる。

旅は財産だとわたしは思っている。
お金や形あるものがいつかなくなっても、思い出は消えることはない。
そして、旅をすることで学校では学べないものを感じ取ってもらえると思う。
天草の小さな学校で学んでいても、
世界をのぞめる広い視野を持ってほしい。
だから、世界中あちこちへ連れて行きたいのだ。

携帯電話が鳴った。
自宅からだ。
「パパ、何時に帰る?
春休みね、行きたいところがあるんだけど」
次の旅行の話がしたいらしい。楽しみにしているようだ。
わたしも彼女たちとの旅を楽しみにしている。
彼女たちの成長という思い出をもらっているからだ。
これは、わたしにとって何ものにも優る大切な財産だ。
携帯電話をしまって、わたしはタクシー乗り場へと走った。

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石山離宮 五足のくつ オーナー 山﨑 博文
下田温泉一の老舗『旅館 伊賀屋』の六代目として 天草下田温泉に生まれた天草育ちの天草男児。 2002年7月に、九州の西の果て、東シナ海を見渡す山に 全室露天風呂付き離れの温泉旅館『石山離宮 五足のくつ』をオープン。 趣味は散歩と温泉と水泳。旅行家としての一面も持つ。
石山離宮 五足のくつ オーナー 山﨑 博文

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