天草・下田温泉の旅館「五足のくつ」は、九州は熊本にあり、離れの各客室に自家源泉・かけ流しの露天風呂が付く。天草四郎ゆかりの地。

先日、街で友人へのプレゼントを買って、店を出たときのことだ。
交差点で信号待ちをしていると、ポツリ、ポツリと雨が降りだした。
傘を開こうとすると、
後ろから「お客さま」と呼ぶ声がした。
自分のことだろうか、と思いながら振り向くと
先ほど、プレゼントを買った店の店員が立っていた。
「プレゼントが濡れてしまうといけないので…」
彼女はビニールカバーを私の紙袋にかけた。
「わざわざ、追いかけて来てくれたのですか? ありがとうございます」
という私に、
「信号待ちをしているお客様の姿が見えたので…」
と答え、彼女は一礼すると、店へ戻った。

その日は、強い雨が降り続き、ずいぶん濡れてしまったが、
彼女のビニールカバーのおかげで、プレゼントを濡らすことなく届けることができた。
そのことを友人に話すと、
「今時、珍しい店員さんだね」
と感心していた。

雨の日には、ビニールカバーをかけた買物袋をよく見かける。
雨天時は、商品にビニールカバーをかけるというマニュアルがあるに違いない。
スタッフの中には、「荷物が濡れてしまう」、
だから「ビニールカバーをサービスしよう」ではなく、
「雨が降っている」から「ビニールカバーをサービスしなきゃ」
という思考になっているものもいるだろう。
しかし、交差点まで追いかけて来てくれた彼女のそれは、 前者だっただろうと思った。

友人宅の帰りに、妻から頼まれていた買物をするために酒屋に立ち寄った。
顔見知りの店員が、娘に、と非売品のジュースをくれた。
「ありがとう」と私は受け取る。
いつも娘のことを気にかけてくれる酒屋の気持ちがうれしかった。
気持ちがあって生まれるサービスは、人を幸せにする。
冷たい風が吹く夕方だったが、ポケットはポカポカと温かかった。