天草・下田温泉の旅館「五足のくつ」は、九州は熊本にあり、離れの各客室に自家源泉・かけ流しの露天風呂が付く。天草四郎ゆかりの地。

天草のパワー
先日、崎津天主堂で西洋古楽器のコンサートが行われた。
リコーダーやゴシック・ハープ、ヴィオラ・ダ・ガンパといった
中世ヨーロッパ期の楽器による演奏会だった。
これらの楽器の音色が天草に初めて響きわたったのは16世紀。
8年の歳月をかけヨーロッパを巡った天正遣欧少年使節団によって演奏された。
使節団の一行は、京都・聚楽第にて豊臣秀吉の前でもその音色を披露したという。
それから約500年。
そんな背景もあって、天主堂でのコンサートはさらに感慨深いものがあった。
大勢の人々が、その調べに酔いしれていた。

演奏したのは、日本でも有名な「アントネッロ」というグループだった。
リーダーの濱田芳通氏はこんなことを言っていた。
「心が病んでいるときに、ここ(天草)へ来たら、
もう一度演奏しようというパワーがわいてきた。
だからずっと天草で演奏したいと思っていた」と。

天草が彼に与えたパワーとは何だろう。
たとえば、自然。
東シナ海に浮かぶ奇岩、
どっしりと根をはる樹木、
生命力にあふれた花咲き乱れる大地、
どこからともなく打ち寄せる波、
どこまでも続く広大な海。
たとえば、そこに住む人々。
旅人を笑顔で迎えいれる明るさ、
いつもわたしに安心感を与えてくれる強さ。
たとえば、歴史。
キリスト教の伝来と弾圧、
東アジア諸国との交流。
さらには、朝、窓を開けると流れ込んでくる凛とした空気、
降り注ぐ日差し、しとしとと大地を濡らす雨、
ひとつひとつの星までもがくっきりと見える夜空。
どれも力強い。
きっと、そんな天草の自然な姿が彼らにパワーを与えたに違いない。

近頃、よく耳にする「ロハス」という言葉がある。
五感を大切にする、基準を自分に置く、
地球のものすべてがつながっていると意識する…。
これは、自然や目に見えないものから力をもらい、
信念のまま、自分の足で生きていこうということではないだろうか。
旅にもまた、今までの他力本願による単なる癒しではなく、
自分の力を蓄えるという新しい癒し、
自己治癒力を養うことが求められているのではないだろうか。
わたしは「五足のくつ」という旅館を通して
天草のパワーをより多くの人に注いでいける、そう確信している。