天草・下田温泉の旅館「五足のくつ」は、九州は熊本にあり、離れの各客室に自家源泉・かけ流しの露天風呂が付く。天草四郎ゆかりの地。

飛行機
2000年に天草空港が開港し、飛行機に乗る機会が増えた。
天草から福岡までは35分、羽田空港へも乗換えを含め3時間あれば到着する。
陸路か海路しかなかった時のことを思えば飛躍的に世界が近くなった。

タンザニアを旅したときのことだった。
突然、乗るはずだったヨーロッパ行きの飛行機が欠航し、
一週間ほど出発を延期することになってしまった。
わたしは、滞在していたホテルを拠点に毎日あちこちへ出かけたり、
初めて行くアフリカの市場で買い物をしたり、
ホテルのカフェで日がな過ごしたりと思いがけない旅を満喫した。
カフェでは馴染みとなった。
ある日、どこの国から来たのか、と聞かれ
日本から、と空手のマネをして答えた。
すると、めったに出会うことのない東洋人、
しかも初めて見る空手の型に感動したのか、
どこからともなく人々が集まりわたしを取り囲む輪ができた。
あまりの人の多さと歓声の大きさに驚きながらも
わたしは空手のマネをして見せた。
ホテルの部屋に戻り窓を開けると
「空手を見せてくれ」という子どもたちの声が聞こえた。
数にすると1000人は超す勢いだったように記憶している。
まるでハリウッドスターになったような気分だった。
次の日もまた、カフェへ行くと「空手」をリクエストされ、
わたしは出発まで毎日のように空手を披露した。
飛行機の欠航がなければ出会うことのなかったダルエスサラームの人々。
空手家でもないわたしの技に熱狂していた子供たち。

先日、台湾旅行からの帰路、福岡空港で五足のくつの常連のお客様と偶然出会った。
どこに行かれるのか尋ねたら、福岡で催される知人の結婚式に出席なさるとのこと。
天草エアラインで福岡へ飛び、夕方には五足のくつにお戻りになるということだった。
わたしは驚き、そして喜んだ。
飛行機を使えば、五足のくつから福岡までの日帰りの旅は充分可能なのだ。
五足のくつから福岡への外出という滞在の仕方は今まで考えもつかなかった。
お客様から五足のくつの利用法を教えていただいたようなものだ。

旅をするからこそ、新しい出会いと発見がある。
天草エアラインから段々と大きくなっていく天草の島々を見ながら
旅はすばらしい、しみじみと思った。