天草・下田温泉の旅館「五足のくつ」は、九州は熊本にあり、離れの各客室に自家源泉・かけ流しの露天風呂が付く。天草四郎ゆかりの地。

冬物語
先日、友人カップルの結婚式に招待された。
途中、ふたりのなれそめを紹介するビデオが流れた。
結婚を意識したのは数年前の冬、初めてふたりで温泉旅館へ出かけた時だそうだ。
ビデオの中でふたりは幸せそうな笑顔で思い出を語っていた。

つきあい始めてまだ浅いクリスマス前の休日、
彼女と初めて二人だけで旅行に出かけることになったそうだ。
場所は昔ながらの温泉旅館。
今日にでも初雪が降るのではと思われる、かなり冷え込んだ日。
ふたりとも少し緊張していて車内では会話も途切れがちだった。
「ぎこちないまま車の中で3時間、
旅館に着いて仲居さんの笑顔を見た時には救われましたよ」
と友人は冗談を交えながら続けた。
ふたりは温泉で温まった後、夕食をとった。
料理は、山海の幸をたっぷり使った寄せ鍋。
部屋中に広がる鍋のおいしそうな匂いに友人の箸はどんどん進むのだが、
彼女は恥ずかしがっているのか、ほとんど食べていない。
友人は彼女に魚の話をしたそうだ。
海岸でとれるミナという小さな貝をおやつ代わりに食べていたこと。
天草ではお祝いの席でウツボという大きな魚を食べること。
はじめ口数の少なかった彼女も次第に笑顔で話しはじめ、箸も進み出した。
鍋が空になっても会話は尽きることがなく、ふたりは散歩に出たそうだ。
この時、彼女がさりげなく近寄ってきてそっと友人の手をとったらしい。
彼女は画面の中で
「冬なのに心も身体もぽかぽかで、とってもいい気分だったんです。
温かい鍋料理と温泉が、私の心をほぐしてくれたのかも。
それにちょっと酔っていたし…」と無邪気に笑っていた。
「つないだ彼女の手がとても温かかったんです」
友人はこの旅行をきっかけに彼女と家族になりたいと思ったという。

今日も「五足のくつ」には全国からたくさんのお客様がいらしてくださっている。
「五足のくつ」でもこんな心温まるストーリーが生まれているのだろうか。
わたしたちの使命は「お客様の旅のお手伝いをすること」。
今日の夕食には鍋料理も出るそうだ。
客室の清掃も終わり、温泉もちょうどいい湯加減でお客様をお迎えできるよう、
スタッフが最終確認に心を配っている。
「五足のくつ」で素敵な冬物語が生まれますように…。